コラム
流産を考える前に、まず生殖の原理を少し説明しましょう。
■生殖の過程で起こる「淘汰」
生殖の過程でどうしても避けて通れない現象に「淘汰」があります。多くの生物は、発育できずに死亡したり、他の生物に食べられたりすること(自然淘汰)が当然あるものとして、一度にたくさんの子孫をつくります。
ヒトは普通1個の受精卵を子宮の中で大切に育てる動物ですが、ヒトでも生殖の過程に淘汰はあります。
(1)多数(数億匹)の精子が競争して1個の卵子と受精する過程
(2)受精した卵が着床するまでに死んでしまう現象(受精卵の約70%)
(3)妊娠初期(4~8週)の自然流産(妊娠例の約15%)
(4)妊娠中期の胎児死亡(妊娠例の1%以下)
(5)生まれてすぐの新生児死亡(妊娠例の1%以下)
(1)と(2)は、妊娠成立以前に、本人が気付くことなく起こりますが、淘汰の結果で「妊娠不成立」が何度も繰り返されると「偶然なのか不妊症なのか?」気になり始めます。
(2)~(5)の多くは一定の確率で発生してしまう染色体(注)の異常に起因するとされており、女性の加齢に伴って増加します。
特に(3)の大部分(おそらく90%近く)は胎児の染色体異常(65%以上)やその他の異常(遺伝子異常など)によるものとされています。
■自然流産の大部分は胎児の異常が原因
妊娠成立後に起こる事((3)(4)(5))で最も高頻度なのは、(3)の妊娠初期の流産です。流産を経験すると「私があの時無理をしたから…」とか「あの薬を飲んだから…」と悔やむ人が多いのですが、実は単なる自然淘汰であることが大部分で、逆に「もし流産しなかったら異常な赤ちゃんが生まれた可能性があった」ということなのです。
実際、これだけ多くの淘汰が行われても、それをくぐり抜けて、出生児の2~4%は異常を持って(ただし軽い異常が多く含まれますが)生まれます。したがって流産は悲しいことですが、「流産は誰にでも起こる自然淘汰で運命的なこと」と考え、乗り越えて次の妊娠に臨んでいただきたいと思います。
ただし、繰り返される流産や、妊娠10週以降での胎児死亡、重度の胎児発育不全の場合には、女性の内分泌異常や免疫異常(抗リン脂質抗体など)、夫婦いずれかの染色体異常などが高頻度で見つかるとされていますので、早めに専門医に相談することをお勧めします。
2014-06-18 13:44:49
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不妊カップルの30~40%は男性側に以下のような問題があります。
(1)性交や射精の異常
ED(勃起障害)や射精障害など。糖尿病に起因するケースもありますが、多くは精神的なものとされ、わが国では50歳以下の男性の5人に1人はEDとの報告があり、高じてセックスレスになるケースも増えています。
(2)精子の産生異常
下垂体ホルモンの分泌異常(LH・FSH・プロラクチンなど)、先天的異常(染色体や遺伝子の異常や停留睾丸など)、炎症(流行性耳下腺炎<おたふくかぜ>や前立腺炎など)、高度な精索静脈瘤(精巣の静脈の逆流)、環境因子(高温環境下での長時間労働など)によるほか、原因不明のケースもあります。男性不妊症の約90%が精子の産生異常ですが、そのうちの約70%が原因不明です。「ダイオキシンなどの内分泌攪乱物質の影響」との説もありますが、十分解明されていません。
(3)精子の移送障害
精子排出経路のどこかが閉塞。特に先天性精管欠損症には遺伝的要因も示唆されています。
■精子の数や運動量調べ、異常があるか判定
精液検査で正常か異常かを判定するのに広く用いられるWHOの基準(抜粋)は、次のとおりです。
精液量/1.5ミリリットル以上
▽精子濃度/1ミリリットル中に1500万匹以上
▽高速前進運動精子/32%以上
▽高速+緩徐前進精子の合計/43%以上
▽形の正常な精子/4%以上―。
精液検査の成績はばらつきが大きいため、複数回行うことが必要です。
■人工授精が効果なければ、さらに高度な体外受精や顕微授精
精子の異常に対する薬物療法は残念ながら著しい効果は期待できないのが現状です。軽度~中等度の乏精子症・精子無力症には、人工授精(濃縮精子の子宮内注入)がある程度有効です。それでも妊娠に至らなければ、高度生殖補助技術(体外受精・顕微授精など)が必要になります。
男性は不妊症の検査や治療を受けたがらない傾向が強いのですが、近年は飛躍的に技術が進歩しました。早めに検査を受けて、異常があった場合には積極的に治療を受けることをぜひお勧めいたします。
2014-05-28 19:47:06
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妊娠のプロセスは、卵巣から卵子が放出され(排卵)、卵管の中で精子と出会って受精し発育し、子宮内膜に埋もれて根付く(着床)ということです。しかし、排卵の前にも長いプロセスがあり、それが妊娠成立のための重要なポイントであることはあまり知られていません。
■「予選」勝ちぬいた卵子 妊娠の可能性は20%
卵子は卵巣の中の「原始卵胞」という細胞から約85―90日かかって作られます。若い女性だと、1,000個ぐらいの原始卵胞が卵子になるための競争を毎月開始します。例えて言えば「予選リーグ」。競争に勝った1個の卵子が排卵、つまり「予選」に勝ったものが「本大会の代表」に選ばれるということです。どんなに優秀な卵子が代表に選ばれても本大会で優勝する(妊娠する)確率はせいぜい20%ぐらい。妊娠するにはまだ多くのことを乗り越えなければなりません。
■高齢では染色体異常・流産確率増加
思春期女性は原始卵胞を10―40万個持っていますが、思春期以後は毎月1,000個ぐらいずつ死滅していきます。「予選」に参加する原始卵胞も徐々に減少するため(40歳なら毎月100個くらいまで減少)、競争は活発でなくなり、さらに原始卵胞自体の質も排卵を待っている間に劣化します。従って「予選」を突破しても、高齢女性では質が悪い卵子が選ばれるケースが増え、受精する確率は減少し染色体異常を起こす確率は増加し、結果として妊娠する確率は減少し流産する確率は増加することになります。
■卵巣機能の低下が不妊原因に
不妊の原因は、卵巣機能以外にも精子、卵管、子宮などたくさんのことが関与していますが、35歳以上の不妊女性では卵巣機能が最大の問題です。20歳女性の妊娠する能力を100としたら、30歳で75、35歳で50、40歳で20、45歳では0.5くらい。卵巣機能の低下は、排卵時期が早い(月経周期12日目より前)あるいは遅い(同20日目より後)
▽基礎体温の高温期が短い(12日以下)
▽超音波検査で観察される卵胞数が少ない
▽卵巣や下垂体から分泌されるホルモン量の異常―などで診断されますが、本人はなかなか気づきません。卵巣機能が低下してから不妊治療を始めると効果が出にくくなってしまうので、35歳までの女性なら1年、35歳以上なら半年間不妊であれば専門医の診察を受けることをお勧めします。
2014-05-28 19:41:46
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卵巣に「チョコレート嚢胞(のうほう)」がある、あるいは「血液貯留がある」と指摘されたことがある女性は多いと思います。
■チョコレート嚢胞は子宮内膜症の一種
卵巣チョコレート嚢胞とは広い意味で「卵巣嚢腫(のうしゅ)」の一種です。卵巣嚢腫とは卵巣の中に液体が貯留した状態のことです。貯留物は、水に近い成分や粘液、血液、脂肪のような成分の場合などいろいろな種類があり、時にはがん細胞が見つかることもあります。卵巣チョコレート嚢胞は子宮内膜症により卵巣の中に血液が貯まっている病巣で、古い血液がチョコレート色に見えるのでこの名があります。
■世界的に増加傾向の子宮内膜症
子宮内膜症はイメージしにくい病気だと思います。本来、「子宮内膜組織」とは子宮の内腔の壁を形成している粘膜で、受精卵が着床して発育する場所であり、月経時には出血とともにはがれ落ちます。これと同様の組織が、本来あるべきでないところ(子宮筋層内、卵巣・卵管の中や周囲など)に紛れ込んで炎症を起こしている異常な状態を、「子宮内膜症」といいます。
このような病巣では、月経のたびに出口のない出血が繰り返され炎症や癒着を起こし、月経痛、腹腔内癒着による痛み、卵管の閉塞による不妊などを引き起こします。原因は不明ですが、晩婚化・少子化などにより一人の女性が経験する月経回数の増加の影響とする説もあります。
■不妊症と密接に関連
子宮内膜症の小さな病変は診断するのが困難で、ほとんど見逃されているのが現状です。不妊の原因が特定できないケースで、精密検査のために腹腔鏡検査(腹腔内に内視鏡を挿入して調べる検査)を受けた女性の半数近くに子宮内膜症が発見されるという報告もあり、小さな病変でも病巣から分泌される物質が受精を妨害するなど、さまざまな形で妊娠を邪魔する厄介な病気とされています。このように子宮内膜症は、女性の不妊原因で最も重要なものの一つです。
■病変が見つかれば難治性不妊の可能性も
卵巣チョコレート嚢胞は子宮内膜症の最も発見されやすい病変であり、見つかればその周囲に超音波検査でも見えないような小さな病変が広く存在していると考えられ、すでに妊娠しにくい状態となっている可能性が高いといえます。そのような場合、通常の性交渉や人工授精(濃縮精子の子宮内注入)で妊娠に至らないケースも多いため、手術療法や体外受精などの積極的治療が最終的に必要かもしれないことを念頭に置いておくのが良いと思います。
2014-05-28 19:38:36
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受精してから14日以内(あるいは妊娠判定尿検査が陽性になる前)の妊婦がどんな薬を内服しても、赤ちゃんの異常は発生しないとされています。ただし残留性のある薬(風しんワクチンや一部の抗リウマチ薬など)は要注意です。
■中止できない慢性疾患があれば医師と相談の上計画的に妊娠を
この時期以降は、ホルモン剤、抗凝固剤、精神安定剤、睡眠薬、脂溶性ビタミン、解熱性鎮痛剤、抗生剤、抗菌剤、慢性疾患に対する薬剤などの一部には十分な注意が必要です。特にてんかん、自己免疫疾患、糖尿病、高血圧、心疾患などの慢性疾患のある女性は薬を中止することはできませんので、医師と相談しながら計画的に妊娠することが重要です。
■薬の影響による赤ちゃんの異常は意外と少ない
妊娠中に薬を内服したか否かにかかわらず、先天異常は赤ちゃん全体の100人に対して2~4人くらい発生するとされています。先天異常の多くは偶発的な染色体異常や遺伝的要因や環境要因によるとされており、環境要因には、妊娠時の感染症(風しんやトキソプラズマ症)、病気(未治療の糖尿病やてんかん)、栄養不足(極端な偏食やダイエット)、アルコール、たばこ、食品添加物、違法な農薬、環境ホルモン、環境汚染、そして薬があります。しかし実際に薬の影響で胎児異常が生じる頻度は、100人に2~4人とされる形態異常の赤ちゃんのうち約1%、つまり1万人に2~4人くらいとされておりきわめてわずかです。
ほとんどの薬の安全性は動物実験などで厳しくチェックされていますが、実際に妊婦さんが内服してどんな結果になったかというデータはごくわずかしかありませんので、多くの薬の添付文書には、「治療上の有益生が危険性を上回ると判断される場合のみ投与すること」と記されています。一方「妊娠中には投与しないこと」とされている薬の一部には、「催奇形性を疑われる薬」「動物実験で催奇形性を認めた薬」もありますが、大部分は「妊娠中の投与に関する安全性は確立していない」だけで実際にはほとんど悪影響がないと考えられます。
■不用意に内服しないのが原則 服用は主治医か薬剤師に相談を
妊娠中は不用意に薬を飲まないことが大原則ですが、現在市販されている薬(風邪薬、胃薬など)に危険性の高い薬はほとんどありませんから、妊娠に気づかないで市販薬を通常量飲んでいたとしてもほぼ問題は起こらないと考えていいでしょう。早まって妊娠中絶などと考えてはいけません。どうしても心配な場合は主治医か薬剤師さんに相談しましょう。
2014-05-28 19:35:10
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排卵時期に性交渉を持ってもなかなか妊娠に至らないときに、「人工授精」という治療がよく行われます。排卵日ごろに洗浄濃縮した精液を子宮内に注入する方法です。
■自然妊娠に近い治療法で費用も手ごろ
子宮内に注入された後、精子は自力で卵管内に進入して卵子と受精するので、自然妊娠のプロセスに近い受け入れられやすい治療法といえます。「体外受精」(卵子を取り出して受精させた後に子宮に戻す治療)に比べれば、費用も20分の1程度と手ごろです。
■子宮頸管粘液不良や性交障害などで適応 卵管通過性や精液などの検査が必須
人工授精が適応できるのは次の場合です。精子濃度や運動率が不良(ただし極端に不良の場合は体外受精の適応)
▽子宮頸管粘液不良や性交後検査(フーナー検査)が成績不良で、子宮内への精子の進入が不良と考えられる場合
▽EDなど性交障害。
その他、原因不明の不妊で妊娠に至らない場合にも有効であると報告されています。人工授精を受けるまでに以下の検査が必須です。「超音波検査」=排卵確認や子宮の異常の有無の確認、「子宮卵管造影レントゲン検査」=卵管閉塞の有無の確認、「精液検査」「妊娠に関係する血中や尿中ホルモン値測定」など。
■1回あたり妊娠率は高くないが、排卵誘発剤併用などで上昇
人工授精は、排卵直前あるいは直後(排卵後10時間以内)に行うのが最も効果的とされるため、まずは超音波検査や尿中ホルモン検査で排卵時期を推定します。男性は2~3日の禁欲期間をもって射精した場合の成績が良いとされており、精液を洗浄濃縮することにより細菌数を減少させ、より多くの精子を子宮内に注入します。
ただ、妊娠率は意外と低く、1回あたり8%前後、累積妊娠率が25%前後とされています。そのため、体外受精全盛の今日においては軽視される傾向が強いですが、排卵誘発剤の併用等で累積妊娠率が40%くらいまで上昇するという報告もあり、より自然に近い妊娠を希望される夫婦はトライしてみる価値はあるでしょう。
ただし5回以上連続で失敗した場合や、女性の年齢が35歳以上の場合などは妊娠率が大きく低下しますので主治医とよくご相談ください。
2014-05-28 19:32:16
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わが国では、地方自治体が特定不妊治療(体外受精・顕微授精・融解胚移植)を受けた夫婦に対し、要した費用の一部を助成する制度があります。
■一般不妊治療で妊娠の可能性が少ない等 要件満たした夫婦に通算10回まで
助成を受けられる要件は、
(1)法律上の夫婦で、特定不妊治療指定医療機関(県外でも可)において治療
(2)少なくとも所得の多い方の配偶者が住民登録(岡山県に申請する場合は1年以上住所を有していることが必須)
(3)特定不妊治療以外では妊娠の可能性が少ない
(4)夫婦の前年の所得合計(児童手当法施行令を準用)額が730万円未満
(5)地方税を完納している―などです。助成を受けられる回数は、1年目(初めて申請する人)は年度あたり3回まで、2年目以降は年度あたり2回を限度に、通算5ヶ年、10回までです(近々、変更がある予定)。
■治療内容により上限15万円まで 年度内に必要書類を必ず提出
助成の対象になるのは、
▽A:採卵して新鮮胚移植まで実施
▽B:採卵後に胚凍結し、その後融解胚移植を実施
▽C:以前に凍結した胚を解凍して胚移植を実施
▽D:採卵後、体調不良により治療終了
▽E:採卵したが授精しない
▽F:採卵したが卵子が得られない―のいずれかのケースです。
助成額の上限は、A、B、D、Eでは15万円、C、Fは7万5000円。治療が一区切り付いた時点で、年度内(支払い終了日以降最初の3月31日まで)に必要書類を添えて提出します。提出が次の年度になると助成が受けられません。
■各市町村で独自の助成制度も 今後は対象者の年齢制限も検討中
岡山県では、岡山市と倉敷市に住所がある場合は各市が、その他の場合は県が助成しています。また、それとは別に各市町村(津山市、笠岡市、玉野市、総社市、井原市、高梁市、新見市、備前市、瀬戸内市、赤磐市、真庭市、美作市、浅口市、里庄町、矢掛町、鏡野町、奈義町、久米南町、美咲町、吉備中央町、勝央町、西粟倉村、新庄村など)が独自に少子化対策を実施している場合があります。これらの市町村に在住している人は別途助成が受けられますが、さまざまな条件があるので、いずれの場合も各市町村のホームページなどで詳細を確認してください。
なお先日、不妊治療の助成金支給について年齢制限を定めることを検討中と、厚生労働省が発表しました。今のところ、妊娠の成功率が大幅に低下する43歳以上を対象から除外することが検討されています。多くの諸外国でも年齢制限を設けており、近々実施される可能性があるので注意が必要です。
2014-05-28 19:25:09
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不妊治療で最も強力な治療である体外受精において、総治療あたり(※)の妊娠率は、女性の年齢22歳で30.0%、30歳で26.6%、35歳で24.1%、40歳で12.5%、43歳で4.9%、45歳で1.8%です。
年齢とともに妊娠率が徐々に低下していますが、35歳からは著しく、40歳を超えると体外受精でさえ厳しくなります。
実際に出産に至る確率(出生率)は、年齢別にそれぞれ20.0%、17.4%、15.4%、6.1%、1.9%、0.5%しかありません。
(※採卵した人および採卵にいたる前に反応不良で断念した人を分母にして算出。解凍融解胚移植分は含まず。日本産婦人科学会集計=2007年)
■受精卵の異常が原因
高齢になると卵巣機能低下による受精卵の異常(染色体異常など)が増えて、妊娠しても多くが流産するためです。
つまり40歳では体外受精でも妊娠するのは12.5%で、そのうちのおよそ半数は流産するので実際の出生率はわずか6.1%しかなく、さらに45歳では出生率0.5%(200回で2回)と、ほぼゼロに近くなります。
女性は、高齢になるにつれて妊娠率が低くなる上に流産率は高く、出生する赤ちゃんの異常も少なくありません。
■寿命が延びても生殖年齢は同じ
40歳を過ぎて出産した芸能人の報道などを聞いて、「自分もまだまだ大丈夫」と考えている人が多くいます。
男性の場合は、生殖年齢の明確な〝限界〟が分かりづらいですが、女性の場合は40歳を過ぎると急激に可能性が低くなります。
これは人生50年と言われた時代でも、女性の平均寿命が80歳を超えた現代でもほとんど変わっていないとされています。
■女性の晩婚化も要因の一つ 年齢と卵巣機能の関係理解して
35歳を過ぎて結婚、その後1~2年経過して妊娠しないため病院を受診して不妊症と診断され、そこで初めて高齢女性の妊娠率が低いことを聞かされて愕然(がくぜん)とする―という人が後を絶ちません。
現代社会は仕事を持つ女性が多く、晩婚傾向にありますが、加齢に伴って卵巣機能があまり低下すると、体外受精などの高度な不妊治療を行っても妊娠に至らない可能性があるということを十分理解していただきたいと思います。
2014-05-28 19:10:44
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結婚を控えている女性は妊娠、出産の準備として、また健康診断の良い機会として、子宮がん・卵巣機能・各種感染症検査などを受けることが推奨されています。
パートナーや赤ちゃんに病気をうつしたり、自分の健康を害したりしないためには結婚前に、結婚の予定がなくても、性交渉がある方は年に1回は次のような検査を受けることをお勧めします。
■子宮頸がん検診
若年女性に増加傾向。性交渉で感染するHPVウイルスが原因として注目されている。早期発見できれば手術で完治し、妊娠能力を温存することもできる。
■超音波検診
妊娠の障害になる卵巣嚢腫(のうしゅ)・子宮筋腫・子宮内膜症・卵巣機能不全などをチェック。月経不順や月経痛がある方はぜひ受診を。
■性交渉で感染する病気
●クラミジアトラコマティス=
若年女性(高校生を含む)の10%以上が感染しているとされている。女性ではおりものの増加や卵管閉鎖、子宮外妊娠、腹膜炎、不妊の原因に、男性では尿道炎の原因となるが、症状に気付かないケースも多い。
●淋病=
女性は陰部の不快感やおりものの増加、男性は排尿痛や尿道口から膿がでたりする。
●トリコモナス=
女性は悪臭を伴うおりものが増え、外陰部がかゆくなる。男性は症状が乏しいので気付かずに女性に感染させてしまうことが多い。
●カンジタ=
カビの一種による膣(ちつ)炎で、性交渉がなくても発症することがある。白い酒かす状のおりものや激しいかゆみを伴う。再発しやすい。
■性交渉または血液を介して感染する病気
●HIV(エイズ)=
岡山県内でも毎年数人の男女が感染者と判定されているが、実際にはその6倍ぐらいの感染者がいると推測されている。
●梅毒、B型肝炎、C型肝炎
■妊娠中に感染すると流産や胎児異常を起こす可能性がある病気
●風疹=
予防接種をほとんどうけていない世代(昭和54年4月2日から昭和62年10月1日生まれまでの人)は特に要注意。免疫がなければ予防接種を。
●トキソプラズマ=
猫のふんや豚肉などから感染する寄生虫が原因。 ほとんどの感染症は男女に共通していますので検査はカップルで、治療が必要な場合も二人同時の治療をお勧めします。男性は精液検査も受けるようにしましょう。
2014-05-28 19:05:14
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■日本の不妊カップル10組に1組以上 排卵や子宮内の異常などが原因
日本では結婚生活2年以上で妊娠しない場合を「不妊症」と呼ぶことになっています。ちなみにアメリカでは、結婚生活1年で赤ちゃんができない場合としています。実際に、結婚後1年以内に80~90%のカップルは妊娠しますので、1年のほうが現実的でしょう。
日本での不妊カップルは、10組に1組以上とされています。女性側の原因には、体質や高齢のためうまく排卵できないケース、クラミジアなどの性感染症や子宮内膜症という病気が引き金となり、卵管閉塞などが起こって卵子がうまく卵管に取り込めないケース、抗精子抗体(精子に対する異常な免疫)があるため子宮に精子が進入しにくいケース、子宮内膜が不良で着床できないケース―などがあります。
■女性の生殖能力、年齢とともに低下 若年層の精子異常も増加傾向
若年女性では、妊娠中絶を繰り返して子宮内膜が傷ついたことによる不妊もありますが、最も懸念されるのは、無防備な性交渉による性感染症のまん延で卵管異常が増え、不妊症予備軍が著しく増加していると考えられることです。一方、最近では晩婚化により年齢的に妊娠のチャンスを逃す女性も増加しており、加齢による生殖能力の低下は重大な問題です。女性の生殖能力は35歳ごろから徐々に低下し、40歳を超えると極めて厳しい状態になるからです。
男性側の原因は主に精子の異常(精子数、運動能力異常、形態不良など)です。男性は女性より年齢による生殖能力の低下は緩やかですが、逆に若年なのに精子が不良の方も増えています。
■カップルで検査、3割が原因不明 年齢や希望に応じた適切な治療を
検査は、女性は基礎体温(排卵の有無)のチェック、子宮卵管造影検査(卵管の通過性のチェック)、ヒューナ検査(精子の子宮内進入チェック)、超音波検査・尿中LH検査(排卵時期の推定)、血液検査(ホルモン状態や抗精子抗体)、男性は精液検査、血中ホルモン検査等、そして夫婦ともに感染症検査等をすることになります。
原因を調べても約30%のカップルは原因不明です。問題点が見つかる場合では、その約3分の1は女性側に、3分の1は男性側に、3分の1は双方に不妊原因が見つかります。これらの検査結果や夫婦の年齢、将来の希望などを考慮しつつ治療を開始し、必要に応じてステップアップ(投薬、人工授精、体外受精など)していくことになります。
2014-05-28 18:59:53
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