排卵時期に性交渉を持ってもなかなか妊娠に至らないときに、「人工授精」という治療がよく行われます。排卵日ごろに洗浄濃縮した精液を子宮内に注入する方法です。
■自然妊娠に近い治療法で費用も手ごろ
子宮内に注入された後、精子は自力で卵管内に進入して卵子と受精するので、自然妊娠のプロセスに近い受け入れられやすい治療法といえます。「体外受精」(卵子を取り出して受精させた後に子宮に戻す治療)に比べれば、費用も20分の1程度と手ごろです。
■子宮頸管粘液不良や性交障害などで適応 卵管通過性や精液などの検査が必須
人工授精が適応できるのは次の場合です。精子濃度や運動率が不良(ただし極端に不良の場合は体外受精の適応)
▽子宮頸管粘液不良や性交後検査(フーナー検査)が成績不良で、子宮内への精子の進入が不良と考えられる場合
▽EDなど性交障害。
その他、原因不明の不妊で妊娠に至らない場合にも有効であると報告されています。人工授精を受けるまでに以下の検査が必須です。「超音波検査」=排卵確認や子宮の異常の有無の確認、「子宮卵管造影レントゲン検査」=卵管閉塞の有無の確認、「精液検査」「妊娠に関係する血中や尿中ホルモン値測定」など。
■1回あたり妊娠率は高くないが、排卵誘発剤併用などで上昇
人工授精は、排卵直前あるいは直後(排卵後10時間以内)に行うのが最も効果的とされるため、まずは超音波検査や尿中ホルモン検査で排卵時期を推定します。男性は2~3日の禁欲期間をもって射精した場合の成績が良いとされており、精液を洗浄濃縮することにより細菌数を減少させ、より多くの精子を子宮内に注入します。
ただ、妊娠率は意外と低く、1回あたり8%前後、累積妊娠率が25%前後とされています。そのため、体外受精全盛の今日においては軽視される傾向が強いですが、排卵誘発剤の併用等で累積妊娠率が40%くらいまで上昇するという報告もあり、より自然に近い妊娠を希望される夫婦はトライしてみる価値はあるでしょう。
ただし5回以上連続で失敗した場合や、女性の年齢が35歳以上の場合などは妊娠率が大きく低下しますので主治医とよくご相談ください。
2014-05-28 19:32:16
コラム