妊娠のプロセスは、卵巣から卵子が放出され(排卵)、卵管の中で精子と出会って受精し発育し、子宮内膜に埋もれて根付く(着床)ということです。しかし、排卵の前にも長いプロセスがあり、それが妊娠成立のための重要なポイントであることはあまり知られていません。
■「予選」勝ちぬいた卵子 妊娠の可能性は20%
卵子は卵巣の中の「原始卵胞」という細胞から約85―90日かかって作られます。若い女性だと、1,000個ぐらいの原始卵胞が卵子になるための競争を毎月開始します。例えて言えば「予選リーグ」。競争に勝った1個の卵子が排卵、つまり「予選」に勝ったものが「本大会の代表」に選ばれるということです。どんなに優秀な卵子が代表に選ばれても本大会で優勝する(妊娠する)確率はせいぜい20%ぐらい。妊娠するにはまだ多くのことを乗り越えなければなりません。
■高齢では染色体異常・流産確率増加
思春期女性は原始卵胞を10―40万個持っていますが、思春期以後は毎月1,000個ぐらいずつ死滅していきます。「予選」に参加する原始卵胞も徐々に減少するため(40歳なら毎月100個くらいまで減少)、競争は活発でなくなり、さらに原始卵胞自体の質も排卵を待っている間に劣化します。従って「予選」を突破しても、高齢女性では質が悪い卵子が選ばれるケースが増え、受精する確率は減少し染色体異常を起こす確率は増加し、結果として妊娠する確率は減少し流産する確率は増加することになります。
■卵巣機能の低下が不妊原因に
不妊の原因は、卵巣機能以外にも精子、卵管、子宮などたくさんのことが関与していますが、35歳以上の不妊女性では卵巣機能が最大の問題です。20歳女性の妊娠する能力を100としたら、30歳で75、35歳で50、40歳で20、45歳では0.5くらい。卵巣機能の低下は、排卵時期が早い(月経周期12日目より前)あるいは遅い(同20日目より後)
▽基礎体温の高温期が短い(12日以下)
▽超音波検査で観察される卵胞数が少ない
▽卵巣や下垂体から分泌されるホルモン量の異常―などで診断されますが、本人はなかなか気づきません。卵巣機能が低下してから不妊治療を始めると効果が出にくくなってしまうので、35歳までの女性なら1年、35歳以上なら半年間不妊であれば専門医の診察を受けることをお勧めします。
2014-05-28 19:41:46
コラム