体外受精の3つの大切なポイント
私たちは体外受精の重要なポイントは「高い安全性」「高い成功率」「高すぎない費用」だと考えております。
- 高い安全性
- 体外受精では現在2-3個の受精卵を子宮に戻すという事が今なお頻繁に行われています。しかしその方法だと妊娠例の約20-30%多胎妊娠になることは避けられません。
妊娠が早産となり赤ちゃんが未熟児で生まれて脳障害になる確率は、赤ちゃん一人につき、単胎妊娠(赤ちゃんが一人の妊娠)で0.1%以下、双胎妊娠(双子)で2-3%、品胎妊娠(三つ子)ではそれ以上です。
体外受精の普及に伴い多胎妊娠数は急激に増えているのに小児科医の数はむしろ減っている為に、未熟児が充分な治療を受けられなかったり病院をたらい回しにされたりする事例が起こりかねません。多胎妊娠が大変危険だという事がお解りでしょう。
安易に「双子や三つ子でもいい!」というお考えを持たないでください。当院では多胎妊娠にならない為に、胚移植は1周期に1個のみおこなうことを原則としています。この方法だと、ごく稀に1卵生双胎が発生する他は多胎妊娠になることはありません。 - 高い妊娠率
- 体外受精で患者様が最も興味をお持ちなのは、その妊娠率だと思います。妊娠率は子宮に受精卵を多く移植した方が高くなりますので、多くの施設では複数個の受精卵を移植しています。その結果として前述のように多胎妊娠が増加してしまっています。全国集計(2002年)では受精卵1個移植での妊娠率12.4%、2個移植で27.8%、3個移植で32.7%、全体で26.5%、1回に移植した受精卵の個数の平均は2.29個です。したがって1個の受精卵が着床する確率(着床率)は14.2%です。
この着床率が正にその施設の成績を端的に表したものです。当院の平成18年の着床率は36.4%です。当院では胚盤胞移植法を用い様々な改良も加えておりますので、このように全国平均の約2.6倍の着床率を達成しています。
さらに形態良好な胚盤胞(グレード3BB以上)なら、1個移植でも着床率(=妊娠率)約50%を達成しています。
たとえ形態良好な胚盤胞でも、染色体分析では約50%が異常を持っているデータがありますので、着床率50%という数字は成功率の理論的な限界に近いと考えられます。
全ての患者様に胚盤胞移植を目指した場合、移植できずに終わる危険性の心配が増加するとされています。しかし当院の40歳未満の患者様で検討したところ、採卵あたり1個以上の良好胚盤胞が得られた症例は69.8%、胚盤胞が得られたが良好ではなかった症例(胚移植は施行)は27.9%、胚盤胞が1個も得られず胚移植できなかった症例は2.3%であり、胚移植できなかった症例は決して多くありません。
ただし40歳以上の患者様ではやはり卵子の質の低下により40%の方が胚移植できませんでした。
妊娠率の統計では「実は形態良好な受精卵が得られず胚移植しなかった症例を大量に切り捨てた為に、見かけ上好成績に見える」というマジックがよくありますが、私たちの成績では胚移植できなかった患者様は決して多くありません。
1周期に1個ずつ移植することにより移植回数が増え、多胎妊娠を防ぎながら累積妊娠率はむしろ向上する傾向にありますので、当院では現在この方法を積極的に患者様にお勧めしております。 - 高すぎない費用
- どんなに技術が向上しても着床率には限界がある為、妊娠までには体外受精を反復して行わざるを得ない場合もあるというのが現実です。
このような実態をふまえて当院では体外受精の費用をご利用しやすい設定にしております。
当院におきましては、H18年は40歳以下の患者様では、体外受精の手技料40万円までで54.5%の方が妊娠されましたので、対費用妊娠率は充分ご満足いただけるものだと考えております。
名越産婦人科&リプロダクションセンター
院長・リプロダクションセンター長
名越 一介