不妊症の治療
- 卵巣因子(排卵障害)
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卵巣因子(排卵障害)に対しては排卵誘発剤を試してみます。
排卵誘発剤には効果が弱いものから順に以下のようなものがあります。セキソビット(内服) 排卵誘発効果はもっとも軽微で副作用(頚管粘液の悪化や多胎妊娠の増加)も軽微です。多胎妊娠率は、自然妊娠とほぼ同等で約1%です。 クロミッド(内服) 排卵誘発効果はセキソビットより強力だが副作用(頚管粘液の悪化や多胎妊娠の増加)も強くなります。多胎妊娠は妊娠の3~5%に上昇するとされています。 hMG注射 排卵誘発効果は非常に強力で頚管粘液の悪化も起こりませんが、多胎妊娠は妊娠の20~30%にまで上昇するとされています。また卵巣過剰刺激症候群が起こることがあります。特に多嚢胞性卵巣の傾向のひとは副作用が起こりやすいので注意が必要です。 多嚢胞性卵巣(PCO)とは
排卵障害で最もよくあるタイプです。月経中に超音波検査を行うと、卵巣内に多数の小卵胞が見えますが、大きな成熟卵胞まで発育できない、あるいは発育しにくいため排卵障害となり月経不順となります。
程度もさまざまでクロミッドで簡単に排卵するものから、内服薬ではまったく反応せず、hMG注射を要するものまであります。hMG注射をすると過剰反応を起こし卵巣過剰刺激症候群を発症したり、多数の排卵が起こり多胎妊娠になったりする可能性が高いとされています。卵巣過剰刺激症候群(OHSS)とは
hMG注射で排卵誘発を行うと、大部分の人は卵巣内には多数の卵胞ができ、卵巣は5~6cmまで大きくなります。それ以上卵巣が大きく腫大した場合は、腹部膨満感が強くなったり、痛くなったり、腹水が貯まって苦しくなったりすることがあります。このような状態が続くと血液が濃縮し、まれに血栓症を起こして病気になってしまうことがあります。程度によっては入院治療が必要です。強い腹部膨満感、尿量減少、気分不良、急激な体重増加がある場合はご連絡ください。 - 卵管因子(卵管閉塞など)
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卵管は子宮から伸びている細い管ですが、ただの管ではなく以下の様な様々な複雑な役割を担っていることがわかってきました。
その役割とは- 精子の輸送。
精子は単に卵管を通過するのではなく卵管内にとどまって卵子を待っているということがわかってきました。 - 精子の受精能獲得の場を提供しています。
- 排卵された卵子を取り込みます。卵管采の広がりが悪い人や癒着のある人は、卵子の取り込みができず妊娠しないケースが実際にはかなり多いのではないかと考えられていますが、それを証明するのは難しいのが現状です。
- 受精卵の初期発育の場となります。
- 受精卵を子宮に送り込みます。
卵管因子の治療
- 腹腔鏡を用いた手術的治療あるいは開腹手術による治療を行い、卵管を介して受精→妊娠を試みるのが基本的には第一選択です。
それでも妊娠に至らなければ体外受精にステップアップします。 - 腹腔鏡などで重度の卵管障害と判定すれば直ちに体外受精にステップアップすることをお奨めする場合もあります。
腹腔鏡検査
麻酔下に腹腔内を小型カメラで観察することで、子宮卵管周囲の癒着の有無、子宮内膜症の有無、卵巣や卵管嚢腫の有無、卵管の通過性などを確認できます。
軽度~中度の癒着剥離や閉塞した卵管の開口術が可能です。さらに術中の卵管通水や腹腔内洗浄や卵巣多孔術(卵巣表面に小さな孔を10個程度あける事で多嚢胞性卵巣による排卵障害を改善する方法、ただし効果は約6ヶ月程度のことが多い)なども妊娠するために有利な環境を作り出すとができるとされています。 - 精子の輸送。
- 子宮内膜症
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本来、子宮内膜組織とは子宮の内腔にあり月経時には出血とともに剥がれ落ちる性質があります。これと同様の組織が本来あるべきでないところ(子宮筋層内、子宮・卵巣・卵管の中や周囲など)に紛れ込んで増殖しているのを子宮内膜症といいます。原因は不明です。
診断は多くの場合腹腔鏡などで直接腹腔内の観察が必要です。症状 月経痛、腹腔内癒着による痛み、卵管性不妊など 治療 軽症なら腹腔鏡下に焼灼、重症なら開腹手術で切除
卵巣チョコレート嚢腫なら穿刺吸引・アルコール注入など
進行を抑える治療として薬物療法もある程度有効予後 一時的に改善してもしばしば再発します。
軽症でも不妊原因となり結局体外受精が必要となるケースがかなりあります。 - 男性因子
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不妊カップルの30~40%は男性側に問題があると言われています。
精液検査で正常・異常を判定するのに広く用いられるWHOの基準は以下のようなものです。精液量 1.5ml以上 精液濃度 1mlの中に1500万匹以上 高速前進精子率 40%以上 前進運動率 32%以上 形態不良率 96%未満 しかし実際には精液検査の成績は検査する度にばらつきが大きいことや、運動率の計算も不正確になりがちで精子の評価は難しいのが実状です。いつも非常に良い、あるいは非常に悪いという場合は評価は正確ですが、グレーゾーンの男性は繰り返し検査を行うことが必要です。
治療
いろいろな薬物療法がありますが実際には効果はわずかです。
精索静脈瘤のケースでは手術により若干の精子所見改善が得られます。
軽度の男性因子では人工授精(洗浄精子子宮内注入)で妊娠率向上が期待できます。
中度~重度の男性因子でも体外受精顕微法で妊娠が期待できます。
射出精液にほとんど精子がいない重度男性因子でも精巣内精子が採取できれば体外受精顕微法で妊娠が期待できます。