妊娠8週の頃、感染症を含めた血液検査、子宮頚がん検診を行います。
血液型(ABO型、Rh型)
分娩は、大量出血を起こすこともあり、輸血が必要なこともあります。
また、Rh(-)の妊婦さんは、血液型不適合妊娠を起こし、子宮の中の赤ちゃんが病気になることもあります。
血液型の確認は必須です。
梅毒
妊娠初期に感染すると高い確率で先天性梅毒児(胎児奇形など)となります。
無治療の場合、妊娠中期に死産することがあります。
感染者はここ数年で急増しています。
B型肝炎
感染経路は、輸血・感染者の血液との接触や分娩時の母子感染などです。
子宮内での胎児への感染は、極めて少ないとされていますが、分娩時に予防対策をしないと高確率で母子感染するとされています。
母子感染をすると赤ちゃんはキャリア(体内にウイルスを持っているが、自身はすぐに発症しない状態)となります。
現在では、母子感染対策(免疫グロブリン、ワクチン投与)が徹底されており、赤ちゃんへの感染もほとんど予防出来るようになりました。
C型肝炎
感染経路は、輸血・感染者の血液との接触や分娩時の母子感染などです。
性交渉での感染はほとんど無いとされています。
子宮内での胎児への感染は、極めて少ないとされています。出生時に母子感染を起こす危険性は少ない(5~15%)とされていますが、現在ワクチンなど有効な感染予防手段は、確立されていません。
HIV(AIDS)
感染経路は、血液・精液・膣分泌液を介するものと、分娩時の母子感染などです。
子宮内で胎児への感染も若干あるとされています。経膣分娩では、母子感染が高率に発生するので帝王切開が必要とされています。
HIV感染は以前ほど話題になりませんが、我が国でも徐々に増加しており、年間40名前後のHIV陽性妊婦さんが出産している現状があります。
充分に感染予防をすれば、母子感染をほとんど防ぐことが出来ると分かっています。
クラミジア(クラミジアトラコマティス)
性交渉で感染、約2週間の潜伏期後子宮頸管炎(膿性帯下)、尿道炎、卵管炎、腹膜炎などを生じることもありますが、無症状のことも多いとされています。不妊症の原因としても注目されています。
妊娠中に感染が持続していると、前期破水、早産の原因となることがあります。
診断は、血液中の抗体検査や子宮頸管内擦過による抗原検査で行いますが、菌がまだ生存しているのか、すでに治癒しているのか断定出来ないことがあります。
感染があっても抗生物質の2週間内服でほぼ治癒します。
風疹(3日はしか)
ウイルス感染後、2~3週間の潜伏期後発症(発熱、発疹、耳介後部リンパ節腫脹)し、数日で治癒します。
妊婦さんが感染すると先天性風疹症候群(白内障、心臓奇形、難聴)の赤ちゃんが生まれる確率が高くなります。
症状と血液中の抗体検査で診断します。
トキソプラズマ
猫の糞や豚肉などから感染することのある寄生虫の一種です。
妊婦さんが感染すると、妊娠のどの時期に感染したかにより、流産・早産・死産あるいは生まれた赤ちゃんが先天性トキソプラズマ症(脳の異常など)などに罹患するとされています。
実際の発生頻度は少ないとされていますが、検査を受けることをお勧めします。内服薬で治療できます。
ATL(成人T細胞白血病)
九州方面に特に多いウイルス感染症です。
感染している人は、ATLという白血病を発症する可能性がありますが、発症確率は非常に低いとされています。
感染者が妊娠すると、子宮内で赤ちゃんに感染する可能性が少し(数%)あります。
出産した後で母乳を長期間与えると、赤ちゃんに感染する可能性が30%程度まで上昇するので母乳の与え方に工夫が必要であるとされています。
血糖
血糖値が高ければ元々糖尿病であるか、妊娠によって高血糖状態(妊娠糖尿病)になっている可能性があります。
無治療の糖尿病患者様が妊娠した場合、流産や死産、胎児の奇形が発生する可能性があります。
一方、妊娠糖尿病の場合は、胎児奇形の発生率は増加しませんが、食事に気をつけないと太りすぎた弱い赤ちゃん(巨大児)が生まれる可能性があります。
不規則抗体
輸血や妊娠で発生する、赤血球に対する異常な免疫です。2~3%の妊婦さんが持っているといわれています。
この抗体がある人は、輸血を受ける時に厳密な(ABO型以外の)血液の適合性を調べなければ副作用が起きることがあります。又この抗体が胎盤を通過して、新生児溶血性疾患を起こすことがあります。
子宮頸がん検査
性交渉により感染するヒトパピローマウイルスにより発症します。
妊娠中でも加療が必要です。
性器ヘルペス(感染の疑いがあれば検査するもの)
〈感染経路〉
性交渉により感染します。
〈症状〉
1)急性型(初感染)潜伏期2~7日。風邪症状、発熱、外陰部違和感(灼熱感、水疱、潰瘍、疼痛)、ソケイ部リンパ節腫大。
2~3週間で治癒します。
2)再発性:外陰部違和感(灼熱感、水疱、潰瘍、疼痛)があるが症状は軽度。
5~10日で治癒しますが、しばしば再発を繰り返します。
〈胎児への影響〉
妊娠初期の初感染では流産の危険があります。子宮内感染は極めてまれであり妊娠中絶の必要はないとされています。
しかし、分娩時に赤ちゃんに感染すると高率で新生児死亡(約60%)や後遺症(生存児の約50%に精神発達遅延、眼異常などを発症)が残るので注意が必要です。初感染より1ヶ月以上、再感染より1週間以上経過していない場合は帝王切開分娩が必要です。